数年前にインプラントのネガティブキャンペーンがメディアに露出した時、「インプラントをして5年後にやり直した」とか「10年経って、脱落してしまった」とインプラントって本当に大丈夫なの?と思うような出来事がたくさん報道されたのは記憶に新しいのではないでしょうか。
ただ、実はインプラントはきちんとした歯科医の元で手術を受ければ安全性も高く、やり直しにならないのが普通です。様々な誤解やネガティブなイメージだけが情報として出回っているため非常に残念ではありますが、ここでインプラントの寿命についてお話していきたいと思います。
①インプラントの寿命とは?
まず、インプラントの寿命は10年とか20年とか言われていますが、実はインプラントの寿命は半永久的であると言われています。せっかく高い金額を支払ってインプラントをするのにすぐに寿命を迎えてしまうとなると、正直無駄ですよね。
しかし、インプラントの5年生存率は98%以上、10年生存率は96%と言われているようにとても高い水準となってします。ということは、一般的にはきちんとメンテナンスを受けて毎日のケアを怠らなければ10年以上は確実に持つであろうと言われているのです。
②インプラントは何年持つ?平均寿命は?
インプラントは適切な処置を行い、毎日のケアを怠らなければ10年以上は持つと言いましたが、実際の平均寿命も気になるところではないでしょうか。でも実は、インプラント自体に寿命というものはありません。それは、インプラント自体が腐ったり、虫歯になったりすることがないからです。
世界で高いシェアを持つインプラントメーカーの臨床データによると、10年生存率は90%を超えているということだけが言えます。また、世界で初めてインプラント治療を受けた患者さんは34歳の時に手術を行ったのですが、亡くなる75歳までの41年間、ずっとインプラントを使い続けていたと言われています。
これだけインプラントが持つと聞くと安心ですよね。また、インプラントには保証期間があります。インプラントの成功率は非常に高いのですが、中にはトラブルが生じてしまうこともあります。
例えば、ある歯科医院では10年間のメーカー保証があります。保証期間内であれば、万が一インプラントでトラブルがあっても費用を掛けずに治すことができます。ただし、定期的にメンテナンスを受けなければならないなど、条件もありますので、しっかり確認しておきましょう。
また、歯医者によって保証内容や保証期間が違うので、インプラントを行う前に確認しておくことが重要です。
③インプラントの寿命がきたら?
インプラントの寿命というより、インプラントがダメになる原因は主にメンテナンス不足によるインプラント周囲炎(インプラント周囲粘膜炎)です。インプラント周辺にプラークや歯垢が溜まったままになると、インプラントが細菌に感染し、歯肉が出血したり、インプラントがぐらついたりしてきます。
インプラント周囲炎が進行してしまうと、最悪の場合脱落してしまうこともあるので注意が必要です。また、インプラント周囲炎は歯周病よりも進行が早く、自覚症状が少ないと言われています。
ということは、メンテナンスをきちんと受けていないと気付いた時には手遅れになってしまっていたなんてことも十分考えられるんです。また、放っておいても治ることがないので少しでも違和感があったらすぐに歯科医に行く必要があります。
それでも、インプラントの寿命が来てしまった場合、再手術を行うか、ブリッジをするか、入れ歯をするかという3つの選択肢になります。今まで使用してきたインプラントは取り除いて欠損治療を行う必要が出てきます。
なるべくなら、この状況を避けたいですよね。そして、この再治療にかかる費用ですが、お口の中の状態によって費用が変わってきます。ただ、インプラントの処置をして数年でダメになった場合は保証期間の場合が多いです。
そういう場合、大抵の場合が無料で再手術を受けることができます。ただし、メーカー保証や医院保証など保証内容は歯科医院によって違ってきますので、しっかり確認しておく必要があります。
しかし、インプラント治療をして20年、30年も経過しているのであれば保証期間が過ぎている可能性が高いので、費用は自己負担となってしまいます。
また、インプラント自体に問題があって部品交換をしなくてはいけなくなってしまった場合も寿命を迎えたということになります。
例えば、被せ物との接着に使用したセメントが漏れてしまった場合、これはセメントを付け直すことで再使用が可能となります。また、被せ物自体が破損してしまった場合、インプラント自体に問題が無ければ被せ物だけを作り直せば大丈夫です。
さらに、インプラント体が破損した場合は多くの場合、インプラントを取り出さなくてはいけなくなってしまいます。
ただし、これらの場合も保証期間内であれば費用が掛からず治せてしまうことがほとんどです。
④インプラントの寿命を延ばす方法はある?
さて、インプラントの寿命についてお話してきましたが、実際のところインプラントの寿命を延ばす方法とはどのようなものなのでしょうか。
4-1 毎日しっかり歯磨きをする
インプラントはチタンとセラミックで出来ているため虫歯になることはありません。そして、入れ歯と違って取り出して洗浄することができないので、どうしても歯垢が付いてしまいます。
また、インプラントの周囲には歯茎があるため、根元にプラークが溜まってしまうとインプラント周囲炎を引き起こしてしまいます。これらを回避するためには日々のケアが重要になってきます。朝昼晩、しっかり歯磨きをしましょう。
4-2 歯科医の定期的なメンテナンスを受ける
定期検診の費用は自由診療となるため、歯科医院によってメンテナンスの料金は変わってきます。相場はだいたい3,000円~10,000円と考えておくと良いです。この定期的なメンテナンスを受けることでインプラント周囲炎やインプラントの破損を防ぐことができます。
また、インプラントの保証によってはきちんとメンテナンスを受けてないと保証が利かない場合もあるので必ずメンテナンスは受けておくようにしましょう。このメンテナンスですが、最初の1年は3ケ月に1回、その後は1年間に2~3回となります。
4-3 違和感が出たらすぐに歯医者に行く
「あれ?!おかしいな」と少しでも思ったら迷わず歯医者へ行きましょう。もし、この違和感を放っておくとインプラントが脱落してしまったり、嚙み合わせがおかしくなって他の歯にも影響を与えてしまいます。
もし、ちょっとでも異変に気付いたら必ず歯医者へ行くようにしましょう。
4-4 歯ぎしりや食いしばりに気を付ける
インプラントは天然歯と違い歯根膜がありません。そのため、固いものを噛むと、その力がダイレクトに伝わってしまうため負担が大きくなってしまいます。これを放置していると、インプラントが破損してしまったり、被せ物が割れてしまったりしてしまうので注意が必要です。
ですので、噛み合わせを調整してもらったり、歯ぎしり対策としてマウスピースを作ったりするなどしてインプラントを保護していきましょう。
4-5 なるべくタバコは吸わない
タバコを吸う人と吸わない人でインプラントの寿命が変わってくると言われています。タバコを吸っている人の方がインプラントの寿命は短いです。それはどうしてかというと、タバコはインプラント周囲炎のリスクを高め、骨とインプラントを結合しにくくしてしまうからです。
ですので、インプラントをしている人はなるべく禁煙した方が良いでしょう。もしくは、ヘビースモーカーの人は本数を減らすようにして極力インプラントの寿命を延ばすようにしましょう。
この記事を読んでお分かり頂けたかと思いますが、インプラントに「寿命」はないと言えます。もし、それがあるとすれば、処置を行った歯科医の技術不足が原因となるでしょう。
インプラントをする場合、少しでも安い歯医者を探したくなりますが、仮に歯科医師の腕が悪かった場合、本来ないはずのインプラントに寿命が出てしまいますし、体内に与える影響も大きくなります。
ですので、インプラントの寿命と言うよりも、ご自身の歯の寿命を延ばすために、信頼できる歯科医院を探すようにしましょう。