インプラント

インプラントの1回法と2回法の違いって何?

「インプラントってどんな手術をするんだろう」と思って色々調べていくと、インプラント治療には術式が数種類あることが分かりました。中でも1回法と2回法をよくインターネットで見かけるのですが、何がどう違うのかいまいちよく分かりません。

そこで、インプラントの術式について詳しくお伝えすると同時に、それぞれのメリットデメリットなどをお話していきます。

①インプラントの術式について

 

インプラント治療の術式には

・All-On-4
・サイナスリフト法
・ソケットリフト法
・1回法
・2回法

などがあります。ここでは、1回法と2回法についてお話していきたいと思います。

歯を失った後の選択肢としてインプラントを選択した方が都合が良いこともあります。
そこで、1回法(1ピースインプラント)と2回法(2ピースインプラント)と呼ばれる術式がとられることが多いのですが、手術を1回するのか2回するのかの違いがあります。

最近は2回法でも1回で終わるようなシステムもメーカーから販売されているため、それを採用しているクリニックも多いです。また、通常2回法でインプラントをする時は2回目の手術は後日行うことが多かったのですが、最近はその日に2回目の手術を行う方式をとっているクリニックもあります。

インプラントは本来、抜歯をした後、骨が落ち着くのを待ってからインプラントを埋め込むのが通常の流れだったのですが、2016年ごろから即時荷重の方法をとるクリニックが出てき始め、賛否両論あります。

 

②インプラントの1回法について

 

それではまずインプラントの1回法について一緒に見ていきましょう。

1回法のインプラントは手術を1回だけしか行いません。歯肉を切開してインプラント体を埋め込んでいきます。構造上、インプラントはアパットメント(インプラント体の頭の部分)を露出させたままの状態で3~5か月程度、骨と結合するまで待ちます。

骨とインプラントが結合したら、上に被せ物をして完成です。2回法と比べて被せ物が早くできるのがメリットになります。また、主に国産メーカーのミューワンやブレーンベースなどの製品が使われており、表面にハイドロキシアパタイトでコーティングされているインプラントが特徴となっています。

1回法は、骨と結合するまでの期間が短く、体に負担が少なく、拒絶反応も少ないことから成功率も高いです。また、手術も1回だけなので手術時間も短縮可能です。ただし、インプラントを埋め込む歯がしっかりしていないといけません。

 

③インプラントの2回法について

 

次に2回法の手術について紹介しておきます。

2回法では手術を2回行います。まず、1回目は歯肉を切開し、ドリルで穴を開け、インプラントを埋め込みます。この時、インプラントは完全に骨の中に埋め込み、歯肉をその上にかぶせて縫合してしまいます。それからインプラントと骨がしっかり結合するまで3~6カ月待ちます。

3から6カ月経って、インプラントが骨と結合したら2次手術を行っていきます。一度、縫合した歯肉をまた切開し、アパットメントを結合させ、仮歯やカバーを被せて1か月ほどさらに待ちます。

その後、上物の型どりをして被せ物を被せたら完成です。アパットメントがメーカー純正でないものが使われている歯科医院もあるので、2回法を行う時は確認しておいた方が良いでしょう。

また、どんなメーカーが使われているかというと、海外メーカーではストローマンSLA、オステム、ブローネマルクなどで国産メーカーだとプラトンになります。

2回法の特徴としては金属アレルギーでもインプラント治療が行えることと、サイズが豊富なため自分にフィットしたものが選べるというところです。

 

④1回法と2回法の違いのまとめ

 

それでは1回法と2回法を比較しながら、メリットやデメリットについても一緒に見ていきましょう。

まず、1回法は手術が1回で終わるため完成までの時間が大幅に短縮されます。例えば、インプラント治療を行っているクリニックが遠方だった場合、1回法を選んだ方がメリットが大きいことは確かです。

治療工程が少ないので、インプラントを埋め込んですぐに仮歯を付けて帰ることも可能だし、2回法の技術と比べたら若干ではありますが1回法の技術の方が簡単だと言われています。

また、歯肉を切開するのは1回だけなので患者さんへの負担は軽くなります。インプラント手術を行う人の多くは年配の方が多いので、手術が1回で終わるというのは非常に大きなメリットだと言えそうです。

ただし、1回法の特徴としてインプラントを埋め込む顎の骨がしっかりしていないとできないというデメリットもあります。そのため、あごの骨が薄かった場合、1回法では手術ができないと診断されるケースもあることを覚えておいて下さい。

また、1回法で骨移植や骨再生を併用していく場合、感染症などのリスクが2回法に比べて高くなります。どうしても感染などのリスクが怖い場合、2回法を選択した方が良いでしょう。

次に2回法ですが手術は2回行われます。まず歯肉を切開し、インプラントを骨に完全に埋め込んだ後もう一度歯肉を縫合して骨が結合するのを待たなければいけません。そして、もう一度切開して仮歯を付けるなどの作業が入るため非常に治療に時間がかかります。

そのため、患者さんへの負担が大きくなってしまうのは否めません。ただし、1回法と違ってほとんどのケースでインプラント治療が可能となるので、1回法ではできないインプラント治療も可能になります。

そして、1回法の場合は切開してインプラント体を埋め込んだらアパットメントが露出したままの状態になります。しかし、2回法ではしっかり骨に埋め込んで縫合するため、感染症のリスクが格段に減るんです。これは、2回法ならではの大きなメリットになります。

 

⑤結局、どっちがいいの?

 

以上、1回法と2回法の違いについてまとめてみました。

これらのことを踏まえると、1回法の方が早く治療が終わるし良いと思っている人もいるかもしれませんが、一概にそういうわけではありません。もちろん、早く治療を終わらせたい人に向いているのは確かですが、治療期間が短い分、トラブルも起きやすいです。

それに比べ2回法の場合、インプラント体をしっかり粘膜の下に埋め込み歯肉を被せて縫合するため、骨としっかり結合させることができます。また、感染症のリスクも減少するし、安全性も非常に高いです。

さらに、最近インプラントを入れ直さなければいけなくなったなどという話もよく聞きますよね。2回法ではそういった失敗がほとんど起きないのも特徴の一つだと言われています。

それに、インプラントの術式のところでも触れましたが、今では2回法の治療期間が短縮できるクリニックも多いです。そのため、多くのクリニックでは2回法によるインプラントの術式をオススメしているところも多いようです。

もちろん、1回法をするにせよ、2回法をするにせよ、ドクターの技術も必要になってきます。また、どちらの方式で手術を行うかは症例によっても変わってきます。例えば、「どうしても1回法で手術をしたい!」と言っても1回法ではできない症例はたくさんあります。

1回法の場合、症例に限りがありますからね。そういう場合は2回法でしか手術することができないので、2回法を選択するしかありません。いずれにせよ、医師の判断にお任せすることになります。

このように、インプラントの術式である1回法や2回法にはメリットもデメリットも存在します。また、どちらの術式が良いのかは自分の希望もあるでしょうが、最終的には医師との相談になるでしょう。

ABOUT ME
田中 健久
医療法人社団歯科タナカ 理事長・歯科医師 ネガティブな歯科医院のイメージを”おもてなしの心”で明るく、 元気に変えていく!