最近、歯を失った際に、インプラントを提案されることが多くなったのでは、ないでしょうか?世界中で、歯を失った際の第1選択として、インプラントが選ばれるようになりました。日本でもインプラントを行う歯科医院が増えて、当たり前のように患者さんに説明するようになりました。
患者さんも歯科医師から説明を受けて、インプラントが良いということは、理解できるものの費用がどれくらいかかるのか?心配だという声をよく聞きます。今回は、インプラントの費用に関して、わかりやすく皆さんに、お伝えしたいと思います。
目次
1、インプラント費用の内訳は?
まずは、インプラントを行う時にかかる費用について理解しましょう。
1−1、診査診断料
インプラントを行う前に、インプラントをどのように行うのか?インプラントができるのか?を、検査を行い診査診断していきます。
下記に検査項目をあげます。
- 歯式検査
- 歯周検査
- レントゲン検査(CT)
- 模型
- 口腔内写真
上記の検査を、インプラント費用に含む医院もありますし、別途料金を設定している医院もあります。相場が、1〜3万円なります。
1−2、虫歯・歯周病治療費
インプラントオペを行うにあたり、口の中の細菌数を少なくして、条件を整えて手術をむかえる必要があります。虫歯菌や歯周病菌の数を少なくするために、術前に治療を行う場合があります。虫歯や歯周病の治療は、別途費用がかかります。基本的に保険診療が適応となります。場合によっては、かぶせ物などは、自費診療を選択することもできますので、担当医と相談してみてください。
1−3、インプラントオペ費用
インプラントオペを行う場合は、滅菌状態にて行うために、様々な費用がかかります。手術器具滅菌、インプラント体、カバースクリュー(フタ)、縫合糸、お薬代などなど多岐にわたりますので、全部ひっくるめて、20万円が相場となっています。追加で痛み止めなどを処方する場合は、別途費用がかかると思ってください。
1−4、インプラント土台
インプラントの土台を、専門用語でアバットメントと呼びます。インプラントの土台は、10万円くらいが相場となっています。材質は、ジルコニア、チタン、合金などがあります。
1−5、インプラントかぶせ物
インプラントのかぶせ物を専門用語で、上部構造と呼びます。インプラントのかぶせ物には、種類があります。代表的なかぶせ物を説明します。
1−5−1、ジルコニアオールセラミック(150,000円)
ジルコニアは、白いダイヤモンドと言われるくらい硬い材質となります。金属を用いないために、アレルギーの心配がありません。
- 強度(⭐️⭐️⭐️)
- 見た目良し(⭐️⭐️⭐️)
- 機能良し(⭐️⭐️⭐️)
と三表揃った材料となります。現在の材料の中では、一番良い材料となります。
1−5−2、メタルボンドセラミック(120,000円)
金属の上にセラミック(陶材)を焼き付けたかぶせ物(上部構造)になります。
- 強度(⭐️⭐)
- 見た目(⭐️⭐)
- 機能(⭐️⭐️)
ジルコニアが登場するまでは、素晴らしい材料として、世界中で用いられてきましたが、金属アレルギーの観点より、ジルコニアに首位を奪われた形になります。
1−5−3、ハイブリッドセラミックレジン(100,000円)
金属の上にプラスティックを盛り上げたかぶせ物になります。
- 強度(⭐️)
- 見た目(⭐️)
- 機能(⭐️️)
金属を用いますので、金属アレルギーの方には、用いることができません。また、金属の上にハイブリッドセラミックレジンと呼ばれるプラスティックは、強度的に柔らかく、削れやすいというデメリットがあります。
1−6、メンテナンス(定期検診)費用
インプラントのメンテナンス費用は、天然歯の定期検診を含めて8,000〜10,000円が多いです。
保険でメンテナンスをできないのかと言われますが、インプラントのメンテナンスは、保険では認められていません。残念ですが、保険外の自費診療となります。これに関しては、歯科医院で決まっているのではなく、国で決まっている法律になりますので、ご理解のほどよろしくお願いします。
2、インプラントの費用が歯科医院で違うのは?なぜ?
インプラントは、自費(自由)保険外診療となりますので、歯科医院が各々費用を設定することができます。では、どのようにして医院のインプラントの費用を決めているのでしょうか?
2−1、あなたならどちらの歯科医院を選びますか?
A歯科医院 | B歯科医院 |
---|---|
1. インプラント経験年数(5年) | 1. インプラント経験年数(20年) |
2. 年齢35歳 | 2. 年齢50歳 |
3. 得意治療(歯周病) | 3. 得意治療(かぶせ物(補綴) |
4. C学会認定医(日本) | 4. D学会所属(海外) |
5. 年間埋入本数100本 | 5. 年間埋入本数100本 |
6. 年間セミナー参加数6回 | 6. 年間セミナー参加数12回 |
7. 05年保証 | 7. 10年保証 |
8. メンテナンスに力を入れてる。 | 8. メンテナンスに力を入れてない。 |
9. インプラント値段:30万円 | 9. インプラント値段:50万円 |
2−1−2、インプラント経験年数
インプラントの経験年数は、インプラントの費用を決定する際に大きな要因となっていることが多いです。
インプラントの手術は、やはり経験がものをいう場合が多いですので、経験年数の多い方が、ミスが少なく、信頼を置きやすいことは確かです。
日本にインプラントが入ってきたのが、30年くらい前の1983年です。その頃は、まだ一部の大学でしか行われていませんでしたので、本格的にインプラントが日本人歯科医師で行われるようになったのは、1990年からでしょうか?日本で初めてインプラントが発売されたのは、2001年ですので、約15年の年数が経っています。
インプラントの経験年数が、15年を超えるドクターに関しては、ベテランになると思います。患者さんの中には、ベテランだと目が悪くなっているので、40代のドクターが1番脂が乗っているとおっしゃる方もいますが、インプラントの経験年数が、長ければインプラント費用は、高い傾向にあります。経験年数が長いドクターは、それなりに長い期間、インプラント治療を行ってきているので、若手5年目と同じ金額でインプラントを行いたくないと考えます。つまり、経験値が、値段に上乗せされているとお考えください。
2−1−3、歯科医師年齢
インプラント費用と年齢ですが、経験年数と同じような傾向があります。しかし、年齢が高くてもインプラントを始めて、まだ、間もないという先生もいらっしゃいます。2001年に日本でインプラントが発売されていますので、その頃に歯科大学を卒業されてインプラントを学んだ先生は、40歳を過ぎていることになります。
インプラント費用と年齢の関係は、どちらかというと年齢よりも経験年数の方が、相関関係があるように思えます。
2−1−4、得意治療とインプラント費用
医科に内科や産婦人科があるように、歯科にも歯周病や口腔外科や矯正歯科と専門分野があります。現在では、各大学にインプラント科が創設されており、大学病院でもインプラント治療が受けることができますが、ひと昔前は、インプラント科がない大学もあるくらいでした。
例えば、歯周病や口腔外科出身の歯科医師は、歯肉を開いたり、縫ったりとインプラントを打つ方が得意だったりします。それに対して、かぶせ物やかみ合わせが専門の先生は、インプラントの被せ物を作成する方が、得意だったりします。
インプラントは、歯科の総合治療となりますので、片方だけが得意でも最後まで診療が成り立たないことになります。インプラントしかしないというドクターも、まれにいらっしゃいますが、基本的には、様々な治療ができて、インプラントを行うと考えていただく良いです。
この部分からも、年齢的には、40代を超えているドクターが当てはまりやすいです。自分の自信のある治療に関しては、それなりの費用を設定すると思います。
2−1−5、学会認定医・専門医
日本口腔インプラント学会が国内では、最大になります。日本口腔インプラント学会の専修医、認定医、指導医は、信頼のおける歯科医師です。また、日本ではなく海外の学会に目を向けている歯科医師もいらっしゃいます。
ICOI(International Congress of Oral Implantologists)
Ao(Academy of Osseointegration)
Eao(European Academy of Osseointegration)
などの学会に目を向けている先生もいらっしゃいます。
学会の認定医であったり、海外の学会に参加したりしている先生は、インプラントの費用もそれなりにチャージしており、安い値段では、行っていません。
2−1−6、年間埋入本数
年間埋入本数ですが、以前は、埋入本数が多い方が良いと言われてきましたが、年間埋入本数日本一などをうたっている広告があり、インプラントを打つだけで、かぶせ物は、勤務医におこなってもらう歯科医院もあり、あまり参考になりません。
年間埋入本数が、多い・少ないは、インプラントの値段とは、あまり相関性はありません。
2−1−7、インプラント保証
ほとんどの歯科医院が保証をうたっていますが、5年保証と10年保証があり、やはり10年と長い保証の場合は、それなりの自信の表れとなり、インプラントの費用も、それなりの価格となります。保証の条件として、定期的(3ヶ月おき)にメンテナンスを受ける等がありますので、ご確認ください。
2−1−8、インプラントメンテナンス
インプラントのメンテナンスで定期検診を受ける際は、別途費用がかかりますので、その分の費用は、初めのインプラントの費用には、含まれていない場合がほとんどです。メンテナンス費用は、各医院で異なりますので、ご確認ください。
2−1−9、どちらを選ぶか?
インプラントを行う医院を選択する際は、インプラントの費用だけで歯科医院を選ばない方が良さそうですね。あそこのインプラントは、安くて良いよ!というようなインターネットで、買い物をする感覚で歯科医院を選択すると失敗する可能性が高そうですね。
また、インプラントの価格以外に、ドクターや歯科衛生士さんや病院との相性も重要になってきますので、生涯を通してお付き合いするつもりで医院を選択されると良いかと思います。
そうするとインプラントを行うドクターの年齢も気になってきますね。
3、大学病院のインプラント費用
大学病院のインプラントの価格は、どれくらいなんだろう?と思われる方も多いと思います。ここで東京医科歯科大学のインプラント費用を調べてみました。1本45万円です。下記に主な費用を載せています。
- 相談料:4320円
- CT:15,120円
- インプラント手術:324,000円
- かぶせ物(上部構造):108,000円
開業医と大学病院では、どちらの方が、インプラントが上手いのかと聞かれることがあります。大学病院は、1年目のドクターでもベテランでも1本45万円です。開業医との差はそこにあります。必ず、ベテランのドクターがインプラントを担当するわけではないのが、大学になります。大学病院は、研究機関であり教育機関であることを認識しましょう。
4、前歯のインプラント費用
前歯のインプラントは、奥歯に比べると高いというイメージが、あるそうですが、前歯は、選択するかぶせ物(上部構造)を、ジルコニアを選択することが多いですので、インプラント費用が高くなる傾向があります。(平均45万円)
また、骨造成をおこなったり、歯肉移植を行うことが多いので、費用の総額が高くなる傾向が強いです。(平均10万円)
5、奥歯のインプラント費用
奥歯のインプラントは、下あごは、費用が高くなることは、まれですが、上あごは、歯を抜くと骨の吸収が進むために、骨造成(サイナスリフトやソケットリフト)が必要になります。
通常のインプラント費用(40万円)➕骨造成(10から20万円)の費用がかかる場合があります。
6、格安インプラントは、大丈夫?
広告などで、インプラント1本8万円などの激安インプラントの広告を見たりします。こちら本当に8万円で全てのインプラント治療が終わるのでしょうか?このような場合、インプラント治療総額で、8万円ではなく、インプラント体の費用が、8万円の場合が多く、総額では、もっとかかるというケースが多いです。そのため、総額でいくらかかるのかを確認するようにしましょう。
また、インプラントのメーカーやかぶせ物が金属だけとかプラスティックであったりする場合がありますので、材質やメーカーなども確認しておきましょう。ホームページで確認すると一昔前のインプラントを選択していたりする時があります。
高品質で低価格のインプラントは、ありませんし、インプラントという治療は、数を行って本数を多くして、利益を出す治療ではありません。しっかりと時間をかけて、準備を行ってから、手術を行う治療ですので、薄利多売の考え方は、いかがなものかと思ってください。
7、インプラント費用総額
インプラント費用は、総額で確認しましょうと6でお伝えしました。では、どのような項目があるでしょうか?下記にあげます。
- 診査・診断料
- レントゲン代(CT)
- インプラント手術代
- 骨造成(GBR、サイナスリフト、ソケットリフト、その他)
- 歯肉移植(FGG、CTG、その他)
- 静脈内鎮静法(IV)
- ガイド
- 薬代
- 2次手術代
- インプラント仮歯代
- 土台(アバットメント)代
- かぶせ物(上部構造)代
上記の12項目が、インプラントにおいて発生する費用になります。合算した金額が、インプラントにかかる費用になりますので、インプラントだけの費用で、比較をしないようにしましょう。
8、複数歯のインプラント費用
写真のように歯を3本失った場合、以前は、3本のインプラントを埋入していましたが、現在は、インプラントを打ち、かぶせ物でブリッジという方法を行っています。
以前は、歯を失った本数分、インプラントを行っていましたが、現在は、インプラントの本数を減らして、かぶせ物でつなげる方法が、取られるようになりました。
インプラント費用は、インプラント本数が少なくなりますので、土台(アバットメント)とインプラント代分が安くなります。
9、インプラント費用医療費控除
1年間(1月1日〜12月31日)に支払った医療費の合計が10万円を超えた場合に税金が還付されます。ほとんどの患者さんは、医療費控除に関して、知識がありません。会社にて確定申告時に行ってくれますが、忘れている人もいるようです。
インプラントは、医療費控除の対象となりますので、歯科医院にてインプラント治療を受けると税金が安くなります。注意事項としては、受け取った領収書は、無くさずに取っておいてください。通常、歯科医院では不正防止のために領収書の再発行は、行っておりませんので、ご注意ください。
他にも注意事項がたくさんありますので、詳しくは、「知らなきゃ損する、インプラント医療費控除」をご覧ください。
10、インプラント、入れ歯、ブリッジの費用比較
11、インプラントの費用をデンタルローンで!
住宅を購入する際は、住宅ローンを組みますね。歯科医院にて治療を行う際に組むローンをデンタルローンと呼びます。
デンタルローンは、基本的に通常のローンの審査と同じです。20歳上で安定した収入を得ている人であれば、問題ありません。信販会社により多少の違いはありますが、たいした差ではありません。
デンタルローンを用いることにより、自分の行いたい治療を選択することができますので、月々の支払い金額を考えて、デンタルローンを組みましょう。
詳しくは、「知っておきたいデンタルローンあれこれ」をご覧ください。
総入れ歯のインプラント費用
総入れ歯の方が、インプラントを行う時は、オールオン4・6という方法で、取り外し式の入れ歯から、固定式のインプラントを行う方法と取り外し式の入れ歯に2本くらいインプラントを行い、入れ歯を安定させるインプラントオーバーデンチャーと呼ばれる方法の2種類があります。
それでは前者のオールオン4の費用相場は、約250万円で、6本もちいるオールオン6は、約300万円となります。詳しくは、「オールオン4・6を行う前に知っておきたい10のことのオールオン4・6費用相場」をご覧ください。
次に後者のインプラントオーバーデンチャーの費用相場は、インプラント2本と入れ歯製作費用で、120万円です。
前者と後者の違いは、固定式か取り外し式かですので、患者さんの好みで変わります。一概にどちらが良いというわけでもありません。よく担当医の先生と相談してください。
まとめ
インプラントの費用は、歯科医院によりさまざまです。費用は、おおよそ30〜40万円が平均みたいです。これより極端に安い場合は、注意が必要です。安いには安い理由がありますので、インプラントが、薄利多売な考え方で行う治療ではないことを理解してください。
インプラントを行う歯科医院を選択する際、費用で選択することは避けましょう。費用が安いからといって、遠方まで行って受ける治療ではありません。患者さんにとって、長期間通える歯科医院かを考えて選択しましょう。