目次
- 1 1.金属アレルギーとは?
- 2 2.アレルギーの分類
- 3 3.金属アレルギーになる流れ
- 4 4.歯科における金属アレルギー
- 5 5.歯科金属アレルギー性別・年齢分布
- 6 6.お口の中の環境は、金属を腐食させやすい?
- 7 7.歯科金属アレルギー治療の流れ
- 8 8.歯科金属アレルギーの診断
- 9 9.金属アレルギーを調べる方法
- 10 10.金属を多く含む食品にも注意
- 11 11.チタンアレルギーもあるの?
- 12 12.歯科用金属除去方法
- 13 13.金属アレルギーといえば、ピアス?
- 14 14.歯科金属アレルギーといえば、銀歯?
- 15 15.金属アレルギーの発症部位
- 16 16.金属アレルギーQ&A
- 17 現代に増え続ける金属アレルギーの真実。銀歯は金属アレルギーの元になる!のまとめ
1.金属アレルギーとは?
金属アレルギーは、「接触性皮膚炎」という病名だそうですが、金属と皮膚や粘膜が接するからアレルギーになるわけではないですので、はてさて、なぜ、「接触性皮膚炎」というのでしょうか?
疑問に思いますね。
普段別に金属に触れる機会もなく、なぜ、金属アレルギー症状が出るんだろうと思われるかもしれません。
アクセサリーを多くつける機会が多い女性でなく、男性でも金属アレルギーになる方がいらしゃいます。
人により金属アレルギーが発症するタイミングも様々であり、なぜ、そうなるのかもあまり解明されていないのが現状です。
今まで何の症状もなかったのに、突然、アレルギー症状が発症するのが、金属アレルギーの特徴とも言えるかもしれません。
アレルギーには、作用機序別に4つのタイプがあり、金属アレルギーは、Ⅳ型に分類されます。
接触性皮膚炎は、接触皮膚炎診療ガイドラインによると以下の4つに分類されます。
- 刺激性接触皮膚炎
- アレルギー性接触皮膚炎
- 光接触皮膚炎
- 全身性接触皮膚炎・接触皮膚炎症候群
アクセサリーや時計は、アレルギー性接触皮膚炎に分類されるそうです。
歯科用金属アレルギーでは口腔内に症状が出ることもあるが、むしろお口の中から離れた皮膚に発症することが多く、全身性接触皮膚炎に分類されるそうです。
通常は、口以外の場所に皮膚炎が出た場合は、皮膚科などを受診しますが、なかなか治らないケースは、歯科金属アレルギーが疑われることになります。
時間が経ってからの歯科への受診ですと慢性的な症状となっており、重篤であることが多いです。
2.アレルギーの分類
- Ⅰ型アレルギー(即時型):
花粉症、蕁麻疹、気管支喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎 - Ⅱ型アレルギー(細胞傷害型):
自己免疫性溶血性貧血、バセドウ病 - Ⅲ型アレルギー(アルサス型):
関節リュウマチ - Ⅳ型アレルギー(遅延型):
アトピー性皮膚炎、ツベルクリン反応、金属アレルギー
3.金属アレルギーになる流れ
金属が触れるから、アレルギーになるのではなく、水分により金属がイオン化して、体内でタンパク質と結合することにより、アレルゲンとなり、抗体が過剰反応を起こして、金属アレルギーを起こします。
金属アレルギーは、数日経って発症する人もいれば、数年経ってから発症するので、何が原因かがわからない場合があります。
これが金属アレルギーの非常に厄介な点になります。
数年前に金属を身につけたかどうかも覚えていませんし、何が原因で現在の症状が出ているのか、わからない場合が多いわけです。
皮膚科や歯科において、金属アレルギーかどうかの診断が、非常に難しいわけです。
金属と聞いて思いつくのは、例えば硬貨になります。硬貨は、毎日のように皆さん触りますので、これが金属アレルギーの原因となるとなかなか防ぐことができませんね。 金属アレルギーを防ぐには、金属であっても、金属イオンの流失の起こりにくいものを選択することが重要になります。
金属自体に問題があるのではなく、金属がイオン化して体内に入ることが、問題だと思ってください。
4.歯科における金属アレルギー
現在保険診療で使用している金銀パラジュウム合金や銀合金やニッケルクロム合金は、保険であるがゆえに、経済性を重視されており、安全性は、許容限界内として認められています。
つまり、安全性に関しては、担保されるギリギリということになる。歯科金属アレルギーは、口の中の粘膜や胃や腸より金属イオンが吸収されて、血液によって全身に運ばれ、皮膚アレルギーを起こしますので、通常のアレルギーよりも特定が困難であり、治癒も困難です。
保険で金銀パラジュウム合金や銀合金やニッケルクロム合金が、認められている限り、金属アレルギーとの戦いは、終わらないというのが現状となります。
歯科金属によるアレルギーは、お口の中の金属が接触している部位に症状が現れるわけではなく、お口以外の手や足など離れた部位の皮膚に症状が現れることが多いです。
前述した通り、判定が困難ですので、パッチテストやリンパ球幼若化試験で、陽性であった金属をお口の中より除去した後に、症状が改善して、歯科金属アレルギーが確定することになります。
口の中の金属を除去したにもかかわらず、症状が緩和しない場合は、他に原因がある場合があります。
4-1.主な歯科用金属
4-2.歯科用金属の特徴
- 金銀パラジュウム合金:
歯科において最も使用頻度が高い金属になります。
12%金銀パラジュウム合金がほとんど使用されており、内訳は、金12%・パラジュウム20%・銀50%・銅17%インジュウム1%です。
我々は、「金パラ」と呼んだりもします。 - ニッケルクロム合金銀合金:
歯科では、入れ歯のクラスプと呼ばれるバネに用いたりします。
内訳は、ニッケル71%・クロム5.7%・銅12.4%・その他8.9%です。歯科用の保険金属の1つですが、発がん性物質と言われたりもしています。 - 銀合金:
歯科では、主に土台(コア)の部分に使用される金属になります。
銀合金の成分は、銀が約70%、亜鉛が約10%、スズが約10%です。銀合金は、錆びやすく、金属イオンの流失が起こると、黒く変色してしまいます。
銀合金は、やはり、1番は、イオン化しやすいという問題が1番なのではないでしょうか。 - アマルガム:
アマルガムの主な成分は、水銀で、アレルギーを起こしやすいです。
古い先生や20年以上前の治療でよく使われていました。アマルガムを除去するだけで、体調が良くなったと言われる方もいます。 - 金合金:
いわゆるゴールドと言われる金属ですが、金の含有量により差があります。
18金20金24金の3種類があり、18金は、金の含有率が18/24で750%で、20金は、金の含有率は20/24で830%で、24金は、金の含有率が限りなく100%に近いということになります。
イオン化傾向は、金属の中で一番少ないそうです。 - 白金加金:
金の含有量が50%以上あり、それにパラジュウムを加えたものになります。
金を主成分としたパラジウム、白金、銀、銅、亜鉛、スズ、イリジウム、コバルトが含まれています。
白金課金は、強度にも優れているので、歯科用金属として、多く使用されます。
5.歯科金属アレルギー性別・年齢分布
グラフを見てみると、圧倒的に歯科金属アレルギーの患者さんは、女性が多く男性の約3倍になります。
いずれの年代においても、女性が男性を上回っています。
年代別にみると20代30代が多く、10歳以下では、あまり見られないのは、乳歯の治療において、金属を使用することが少ないからではないかと思われます。
40・50・60代になると男性は、極端に少なくなっています。
20代より歯科金属アレルギーの方が、増えるのは、虫歯による歯科治療が増えることが関係しており、年齢とともに歯を失うために、歯科金属を用いる機会が減ることによるかもしれません。
6.お口の中の環境は、金属を腐食させやすい?
お口の中は、劣悪な環境下にある。
飲食をすると、アルカリ性・酸性問わず、口の中に入ってきます。
熱いモノ・冷たいモノ、硬いモノ、柔らかいモノそして、唾液に常にさらされていますので、金属が腐食しやすい条件が整っています。
また、異なる金属同士が咬む際に、接触する部位では、ガルバニー電流と言われる電流が流れ、金属の腐食を加速させます。
咬んだり、擦れたりすることでも腐食が進みます。
また、腐食して金属イオンを飲み込んだりすることにより、胃や腸より吸収されて、血液で全身に運ばれて、タンパク質と結合して、アレルゲンとなります。
7.歯科金属アレルギー治療の流れ
8.歯科金属アレルギーの診断
下記の内容の質問を、まず行います。
- 医院において適切な治療を受けているにもかかわらず、症状がなかなか改善しませんか?
- 金属や皮製品が接触する部位が、痒くなりますか?
- 歯医者さんで、金属(銀歯)や矯正装置を装着してから、皮膚症状が発症しましたか?
上記内容の質問をした後に、予測を立てながら歯科金属アレルギーとの関連性を精査していきます。
1の場合、まず皮膚科などのアレルギー外来で、治療を受けて改善があったかの確認を行っていきます。
通常のアレルギー治療を、行って治らない場合に、歯科金属アレルギーを疑います。
2の場合、腕時計やペンダントなど金属アレルギーや革アレルギーなどの陰に、金属アレルギーが潜んでいる場合があります。
以前から、腕時計や革製品を身につけるとアレルギーを起こしていたが、症状がなかなか改善しなかったこともあり、パッチテストを行ってみると、金属アレルギーがあり、お口の中の金属を除去したところ、症状が改善するというケースもあります。
3の場合、歯科治療後より、アレルギー症状が発症する患者さんもいます。皮膚症状の発症と歯科治療の相関関係についてになります。
9.金属アレルギーを調べる方法
9-1.パッチテスト
金属アレルギーを調べる方法としては、パッチテストが一般的です。
一般的には、皮膚科で行っていますが、専門的な金属アレルギーの治療を行う歯科医院でも行っている場合があります。他には、リンパ球幼若化試験があります。
パッチテストは、金属の中でも何の金属にアレルギーがあるかを、明確にするための検査になります。
また、患者さんが持参された金属を検査することもできます。
注意事項として、パッチテストは汗をかく時期には実施するのは難しいです。
9-2.リンパ球幼若化試験
リンパ球は、高原刺激を受けて免疫はんのうに関与するようになると、核酸合成やタンパク合成が活発になり、分裂・増殖して免疫担当細胞として分化する。
リンパ球幼若化試験は、この反応を利用し、in vitroで患者のリンパ球に金属イオンを加えて刺激し、チミジンの取り込みを見て、その幼若化の程度により原因を判定しようる試験である。
10.金属を多く含む食品にも注意
ピーナッツ、大豆、お茶、チョコレートには、ニッケルが多く含まれている。
缶詰製品や缶ジュースにも多くの金属が含まれることがある。
水道水にも金属が含まれていることがある。よく使用していない水道水の蛇口をひねると、色が茶色いことはありませんか?これは、金属色が出ていることとなります。
食品が原因で、アレルギーだなんて、信じられませんが、実際に、歯科用金属をお口の中から除去したけど、症状が緩和せずに、普段飲食している種類を変えたことにより症状が緩和したというケースもあります。
11.チタンアレルギーもあるの?
インプラントで脚光を浴びたチタンですが、チタンアレルギーもあります。
チタンは、金属の中で一番生体親和性が高いと言われ、金属アレルギーが最も少ない金属と言われています。
また、チタンは、パッチテストに置いて、使用する基剤により、結果が変わることもあり、判断をすることが難しいと言われています。
また、リンパ幼若化試験に関しても、あまり正確な診断結果が出せないという報告があります。
チタンは、かつてその良好な耐食性から金属アレルギーの原因になる可能性が極めて少ないと言われていました。
12.歯科用金属除去方法
歯科用金属を除去する際は、細心の注意を払わなければなりません。理由としては、削ることにより金属が飛散して、飲み込んだり、粘膜より取り込まれると余計に金属アレルギーの症状が悪化することがあります。
1.ラバーダム防湿
歯科用金属を除去する際は、特殊なラバーダム防出という方法を用いて、除去していきます。
ゴムのシートを用いて、削った金属が飛び散らないように、もしくは、喉の方に行かないようにします。
この方法をラバーダム防湿と呼び、一般の治療としては、根の治療に用いたりもします。
2.金属の下の虫歯チェック
歯科用金属を除去した状態です。
金属の下が虫歯になっています。
金属の下が虫歯になっていたり黒くなり、金属イオンの流失が起こっていたりすることがありますので、それを除去する必要があります。
また、この写真では、白いセメントも見えていますね。
ところどころ茶色い部分が虫歯で、黒い部分は、金属イオンが流失した箇所になります。
3.虫歯の取り残しがないかのチェック
ある程度虫歯を除去してから虫歯が残っていないか?
チェックをしてみます。
濃いピンクの部分は、まだ、虫歯が残っている部分になります。
この部分を残したままですと、また、内部で虫歯が進みますので、慎重に除去をしていきます。
4.最終チェック
最後のチェックになります。
うっすらとピンクの部分は、ありますが、濃いピンクの部分はなくなりました。
この状態まで、根気強く虫歯を除去していきます。
13.金属アレルギーといえば、ピアス?
金属アレルギーの8割は、ピアスだそうです。
なぜなら、ピアスを装着する際に血液や体液に触れやすいことから、金属がイオン化しやすく、しかも耳の傷などから体内に入りやすいことから、アレルゲンになりやすく、指輪やネックレスに比べても金属アレルギーになりやすいです。
14.歯科金属アレルギーといえば、銀歯?
最近、歯科用金属による金属アレルギーが近年、どんどん増えてきています。
扁平苔癬や接触性皮膚炎や手や足に掌蹠膿疱症が、症状としてみられます。
歯科用の金属は、金銀パラジウム合金、ニッケルークロム合金など様々ではありますが、多く用いられるのは金銀パラジウム合金です。
金属アレルギーとして発症しやすいもの、使用頻度の高いものとしては、やはり銀歯が最も考えられるでしょう。
銀歯について詳しくお知りになりたい方は世界にたった日本人だけ。銀歯を付けてる日本人に3つの警告をご参照ください。
15.金属アレルギーの発症部位
- 耳
- 歯
- 手
- 目
- 足
- 唇
- 手首
16.金属アレルギーQ&A
Q:皮膚科で治らないアレルギーは、歯科で治りますか?
A : こちらは、治るかどうかは、わかりませんとしっかりお伝えします。
皮膚科で治らない難治性の皮膚炎の患者さんが、歯科金属を除去することにより、回復に向かわれる患者さんもいらっしゃいますが、逆に、歯科金属を除去しても、皮膚炎の症状が回復しない場合もあります。
そのため、どちらかだけの治療ではなく、歯科と皮膚科の連携をとり、治療を行う必要があります。歯科金属を除去した後も、症状が緩和してくるのに、数ヶ月かかる場合もあります。
Q:歯科材料で、金属を使用しない材料にアレルギーはありませんか?
A : 金属を用いない材料に、セメントやコンポジットレジンやセラミックがあります。
この中でもレジンアレルギーは稀に見られますので、銀歯を入れてない方も注意は必要です。
また、セラミックやインプラントで用いられるチタンは生体親和性がかなり高い材料ですので、アレルギーの発症率もかなり低いものと思われます。
Q : 歯科用金属が使えない場合、すべて自費診療でセラミックにしないといけませんか?
A : 歯科用金属がお口の中で使えない場合、前述したようにすべての金属を外していかなくてはいけません。そのあと、詰め直し、被せ直しをする際に、皮膚科からの診断書があれば、保険適用でレジンを使った材料を用いることが可能です。ただ、セラミックに関してはどのような時も自費診療になってしまいます。
現代に増え続ける金属アレルギーの真実。銀歯は金属アレルギーの元になる!のまとめ
花粉症や食物アレルギー、現代にはアレルギーが増えてきています。
以前は耳にすることのなかったアレルギーの名前まで一般的になってきています。
そのような中で、金属アレルギーも増え続けています。
自分は大丈夫と思っていませんか?金属アレルギーが発症するのは突然です。
今は大丈夫でも、年をとって突然発症することもあるのです。年を重ねてから全ての銀歯を除去するのは中々大変なお話ですね。
そのようなことにならないために、今は金属を治療に用いない、メタルフリーが広まっています。
ご自身のお口の中を確認してみてください。
アレルギーになる前に、健康なお口を保ちましょう。