インプラント

前歯のインプラント治療は難しい?メリットとデメリットとは

インプラン後

こんにちは、くにたち旭通り歯科:歯科医師の清水です。

インプラント体を用いた人への臨床応用、いわゆるインプラント治療が開始されて、50年以上が経過しました。最初の頃は、顎の骨にインプラントを埋入して、噛み合わせをつくるところからはじまり、機能性のみを重視していましたが、近年はインプラントの技術及び材料の進歩に伴い、審美性(見た目)を重視したインプラント治療がどんどん進歩しています。そこで、前歯においても審美性(見た目)を追求した、“ほとんどどれがインプラントなのかわからない”くらいのキレイなインプラント治療が出来るようになってきています。

今回は、前歯のインプラントについて、いろいろとお話をしていきたいと思います。

前歯の重要性

インプラントのお話の前に、前歯そのものの役割について、お話をしたいと思います。前歯とは、右の犬歯から左の犬歯までの6本の歯のことであり、見た目はもちろんのこと、お口の中の機能としても、非常に重要な役割があります。

発音

人が発音をする上で、前歯が非常に重要です。うまく発音をするために、お口の中の空気の流れを、前歯がコントロールしています。前歯が重なっていたり、隙間が出来てしまうと、そこから空気が漏れ、うまく発音できなくなったりします。特にサ行の発音などは、非常に影響を受けやすく、お話をする相手に聞き取りにくくなったりすることがあります。

 

食べ物を噛み切る、奥歯を守る

もう一つの大きな役割は、食べ物を噛み切ることです。前歯は奥歯と比べ、形状がシャープになっており、食べ物を噛み切ることに適しています。噛み切った食べ物を舌で奥歯に運び、奥歯でしっかりとすりつぶしてから飲み込んでいるのです。前歯がなくなると、奥歯ですりつぶすことしか出来ず、奥歯に過剰な負担が加わり、奥歯が抜けてしまったり、欠けてしまったり、割れてしまったりすることもあります。前歯は奥歯を守る機能も備えているのです。

 

以上のことを踏まえ、前歯が欠損(歯がない状態を「欠損」と言います。)した時、どのように治療していけば良いか、考察してみます。

 

 

前歯が欠損した時の治療法

一般に保険でも治療が可能な入れ歯とブリッジについても、併せてお話をします。

 

入れ歯

残っている歯に針金をかける取り外し式のものとなります。前歯が入れ歯の場合、針金をかけた歯が目立つこともあり、審美的に問題が生じてしまいます。

また、先ほど「発音」についてのお話をしましたが、逆に入れ歯があることで、空気の流れが塞がれて、発音が非常にしにくくなることもあります。装着すること自体に違和感を感じる人も多いです。

 

ブリッジ

欠損している歯の両隣の歯を削って、連結をさせて被せ物をする治療法です。利点は、入れ歯と比べて違和感が少なく、見た目も自分の歯とさほど変わらないことです。また、欠損歯の数にもよるのですが、原則として保険での治療が可能です。

欠点は、欠損した歯を補うために健康な歯を削らなくてはいけないことです。また、欠損歯が多い場合は、ブリッジそのものができない場合があるということです。

 

インプラント

インプラント治療は両隣の歯を削ることもなく、単独で治療が出来ます。自分の歯と同じ様に使うことが出来、入れ歯のように取り外しをすることもなく、違和感もほとんどありません。非常に良い治療法ですが、一方で問題も多くあります。

 

前歯のインプラントの問題点

虫歯はガンと似ている歯が欠損する理由はほとんどが歯周病によるものです。歯を支える骨が吸収してしまい、歯がプラプラになり、抜かなくてはならなくなってしまう場合などや、または、歯が折れてしまって抜かなくてはならない状況などですが、もともと、前歯の骨は薄く、さらに歯周病などで骨が吸収してしまっていることから、インプラントを埋入するには非常に難しい状態になってしまっているのです。骨が薄いために、人工骨などで骨を足すことが必要となったり、歯肉が薄いため、歯肉を移植することも必要になったりと、インプラント治療を実施するにあたって、より高度な技術が必要になるのです。

また、前歯は審美性(見た目)が非常に大事な箇所となります。笑った時などは歯や歯茎もしっかりと見えますので、歯の形や大きさなどの左右の対称性、歯肉の連続性などを考えながら治療をしなければなりません。さらに大きな外科的治療が必要なため、大事な神経や血管にも注意を払いながらの治療になります。

 

前歯のインプラントの期間と歯が入るまでの対処法

様々な要素が必要となる前歯のインプラントですが、骨造成などを行うと、骨が固まるまで通常6~9ヶ月かかります。さらに、そこから前歯の型取りなどが必要なため、長いと1年くらいの期間がかかることもあります。入れ歯やブリッジに比べて、かなりの長い期間がかかることを考えなければなりません。その間、欠損箇所に歯はないの?と思われる方もいることと思いますが、安心してください。仮歯が入ることになります。骨の状態が良ければ、そのままインプラントに仮歯を入れることもありますが、ほとんどが両隣の歯にボンドでくっつけて仮歯を入れるか、欠損箇所が多い場合は、仮の入れ歯を入れることがあります。どうしても、入れ歯が駄目な人は、仮歯用のインプラントを入れて、仮歯を入れることもあります。

 

前歯のインプラントの費用

装置が目立たない矯正治療全て保険適用外です。奥歯のインプラント治療と違って、人工骨で骨を造成したり、薄い歯肉を歯肉移植で厚みを持たせたりと、埋入手術以外にも様々な付帯手術が必要になる場合があります。通常インプラント治療は、30万円~50万円程度の費用がかかりますが、骨造成や歯肉の移植術などでさらに5~20万円程度の費用が上乗せされる場合があります。

 

インプラントのメインテナンス

インプラント治療が成功して、キレイに埋入できたとしても、その後のメインテナンスが重要になってきます。歯の形とインプラントの形は、全て同じものではありません。歯とインプラントの隙間が大きくなったりすることがあります。ご自身のケアだけでは、徹底的にケアすることは出来ません。必ず歯科医院での定期的メインテナンス(3ヶ月~6ヶ月ごと)が必要になってきます。後々のことも考えてインプラント治療を受けるのであれば、こういうことも考えた上で決断しなければならないのです。

最後に、前歯のインプラントは、入れ歯やブリッジに比べてメリットはたくさん存在するのですが、審美性や機能性のことも考えなければならないため、インプラントの中でも、もっとも難しい部位となってくるのです。どの歯科医師でも簡単に出来るというものではありませんので、高度な技術を持った先生を探して、治療を受けることをお薦めします。高度な技術を持った歯科医師は、必ず事前説明の際に今回お話してきたようなお話をされるはずです。説明を良く聞き、納得された上で治療を受けることが大切です。

 

ABOUT ME
清水龍 | くにたち旭通り歯科
日本大学松戸歯学部卒業。「オーダーメイドの歯科治療。患者様想いの歯科医院」をモットーに、一般歯科から最先端を行くインプラント治療までトータル治療を提供。また通院が難しい高齢者や体が不自由な方のために、訪問診療への取り組みをしています。