なぜ歯医者の定期検診(メンテナンス)は3ヶ月に1回なのか!?

一通りの治療が終わり、定期的な通院からやっと解放される!と思った日の会計後.「では次回,3ヶ月後に定期検診(メンテナンス)でいらしてくださいね。」と言われ、歯科医院への受診はいったいいつまで続くのだろうか?と不安に思ったことはありませんか?

今回は治療後の定期検診(メンテナンス)の重要性と、実際のところどんなことをするのか、また費用はどのくらいかかるのかについて説明をさせて頂きます。
ぜひ参考になさってください。

1.定期検診(メンテナンス)が必要な【理由】

治療後のお口の中は、痛みや不快感など来院前の問題点が解決され、理想的な状態になっていることでしょう。
忙しい合間を縫って、頑張って通院している間に、衛生士さんにブラッシングのコツも教わり、今度こそ今の良い状態を維持しよう!と意気込んでいらっしゃることかと思います。
しかし、残念なことにセルフケアだけで非常に複雑な構造をしたお口の中を理想的な状態のまま維持することは困難なのです。

口の中はトイレより汚い!?

虫歯や歯周病(歯槽膿漏)は細菌による感染症です。
人間の体の中には多くの細菌が棲んでおり、通常は細菌の種類と数はほぼ一定の状態を保っています。
人間の体にとって有害な細菌が、ある一定数体の中に存在していても健康な人には抵抗力が備わっているため感染しませんし、大きな問題にはなりません。
しかしながら、何らかの要因によって抵抗力が減少していたり、細菌の数が急激に増えたり細菌の種類が変わったりして抵抗力がおよばなくなると感染症を発症する原因となってしまいます。

プラーク(歯垢)は歯の表面に付着した汚れで虫歯や歯周病の原因となります。
プラークは食べ物のかすではなく、口腔内にたくさんいる細菌の塊です。
プラークは1g中に約300種以上の細菌を約1000億個(糞便1g中の3倍!!)も含むと言われています。
プラークは湿潤な口腔内に長く留まるために,細菌同士が結びついて付着性を有した、バイオフィルムと言う形状になって存在しています。
例えば、お風呂場の掃除を怠っていると、ヌルヌルしたピンク色のぬめりが床や壁についてきますが、これもバイオフィルムの一種です。
お湯でさっと流しただけでは綺麗に落ちず、良くこすり洗いをしないと綺麗になりませんよね。

歯石の原因〜プラーク〜

お口の中は、唾液によっていつもきれいに洗い流されています。
しかし、細菌同士がしっかりと手をつなぎネバネバとした付着性を持ったバイオフィルムとなったプラークは、いつまでも口腔内に留まり続けやすくなっています。
丁寧なブラッシングを行なうことによって、ある程度のプラークは除去することが可能ですが、歯と歯の隙間や、歯と歯肉(歯ぐき)の境目などにはどうしてもプラークが残りがちです。
そして、残ったプラークは口腔内の細菌とさらに結びついて付着性を強くしていきます。
また、プラークに唾液中に含まれるカルシウムやリン酸が沈着して石灰化すると、歯石になります。
歯石の表面は粗く凸凹した形をしているため、より一層プラークが付着しやすくなっています。
歯石があるとそこにプラークが沈着してさらに歯石が増大するという負のスパイラルに陥ってしまうのです。
大きくなった歯石の中は、歯周病の原因となる嫌気性桿菌にとって絶好の棲家です。

バイオフィルムの恐怖!

細菌が凝集しバイオフィルムを形成する際には、表面が付着性のある物質でコーティングされてしまうため、殺菌成分をもつ抗菌剤を使用してもバイオフィルムを破壊することはできません。
抗菌剤はお口の中にいる細菌を殺菌することはできても、バイオフィルムの中に浸透して内部の細菌を殺菌することができないのです。
歯にネバネバと付着し抗菌剤も効かないとなるとバイオフィルムはいったいどのようにして除去すれば良いのでしょうか。

バイオフィルムを除去する最も効果的な方法は、物理的に破壊することです。
破壊されてバラバラになった細菌には抗菌剤も奏功します。
つまりバイオフィルムを物理的に破壊するための一番の方法は毎日のブラッシングです。
しかし、先にも述べたように,歯と歯の隙間や歯と歯肉の境目の溝などは磨きにくく、磨き残しも多くなりがちです。
バイオフィルムは、一部が残っているとそこにまた細菌が付着し増大するという恐ろしい性質を持っているのです。

定期検診≠健康診断 定期検診=予防処置(治療)です!

バイオフィルムの除去のために、定期的に歯科医院で徹底的な歯のクリーニング(PMTCといいます)をしてもらうことが必要です。
普段のセルフケアによるブラッシングでは、お口の中の虫歯菌や歯周病菌を全て取り除くことはできませんが、歯科医院での定期的なPMTCとご自身での丁寧なブラッシングによるセルフケアを両立することで効果的にバイオフィルムを除去し、虫歯や歯周病の予防に努めることができるようになります。

PMTC(Professional Mechanical Tooth Cleaning)とは、歯科医師や歯科衛生士などの専門家による歯科用器具を使った歯磨きのことです。
特別な機械を使用するため、セルフケアでは落としきれないプラークや歯石を除去することができます。
また除去後には歯面の微細な傷を研磨し,表面を滑沢にすることでプラークがつきにくい状態にします。

定期検診には、経過観察や新たなトラブルの早期発見だけでなく、予防処置としての意味合いが大きく含まれているのです。

2.定期検診(メンテナンス)で行なうこと【手順】

近年、歯周病と全身疾患との深い関連について取りざたされるようになってきました。
ある全身疾患では、歯周病を伴うケースが多いこと、また逆に歯周病に罹っていることで発症のリスクが高くなる全身疾患もあります。
以上をふまえて, メンテナンスの際には全身の健康状態からチェックを行ないます。

  • 生活習慣の確認:全身の健康状態についての確認
  • 飲酒や喫煙:歯周疾患を増悪させるような嗜好品についての確認
  • 服薬:口腔内に影響を与えるような服薬についての確認

セルフケアの実施状況についての確認をします

  • 口腔衛生状態のチェック:プラークの付着状態 虫歯の有無 口腔粘膜や舌の異常がないかを確認します
  • 歯周病検査:歯肉のチェック 歯周ポケットの深さの確認 歯周病の確認
  • PMTC(Professional Mechanical Tooth Cleaning):歯科医師や歯科衛生士による専門的な器具を使用した歯石除去や歯面清掃・研磨をします
  • ブラッシング指導:必要に応じてセルフケアについての指導を行い,次回来院時までのセルフケアの指導をします.

歯周病検査では、歯と歯肉の間の溝(歯周ポケットと言います)の深さを計測し、歯周病の重症度の評価を行ないます。
深さが6mm以上ある重度の場合は、再生療法,歯周外科処置や抗菌療法などの治療が必要です。
4~6mmの中等度の場合ではスケーリング、ルートプレーニングと言った歯石除去およびPMTCを行い、改善を試みます。

3.定期検診(メンテナンス)にかかる費用

メンテナンスは保険診療の範囲で行なうことができる場合がほとんどです。ただし疾患がある場合のみです。
疾患がない場合は自費のメンテナンス扱いです。
自費のメンテナンスの場合の費用は、5,000〜10,000円となり、各歯科医院によって差があります。
歯周病検査や歯石除去および口腔内診査にかかる費用は、歯の本数や義歯の有無によって保険点数が異なってくるため多少の個人差はありますが、3割負担の場合でも2,000~3,500円程度です。
もちろん、メンテナンスの結果、治療の必要性が生じた場合には別途治療代がかかってきます。
歯周病や虫歯が進行し治療が必要になった場合の、治療にかかる時間とコストを考えると、定期的なメンテナンスでしっかりと予防をしていくことは費用対効果の面からもメリットが大きいと言えます。

4.定期検診(メンテナンス)なぜ3ヶ月に1回なのか??

ある有名な論文に、スケーリングやルートプレーニングといった歯科医師による歯石除去など歯周病の治療を受けた後で、適切なセルフケアを行なうことができていた場合でも、歯周ポケット内の歯周病の原因となる細菌の数は、3ヶ月で元の値まで戻ってしまうというデータが記されています。
このデータが3ヶ月に1回のメンテナンスの根拠となっています。
つまり3ヶ月に1回の予防処置を行なうことで、歯周ポケット内の細菌を除去し、歯周病の再発および悪化,新たな発症を防ぐことができるのです。

また歯周病や予防歯科先進国であるスウェーデンには、メンテナンスの間隔についての論文記載が多くあり、3ヵ月ごとのメンテナンスが効果的であるということの裏付けになっています。

以下に論文を一部抜粋します。

*Rosling Nyman&Lindhe:体系的にプラークコントロール(メンテナンス)が行われた場合、リコール(定期受診)があまり行われなかった場合と比して歯周病などで失われた骨の再生に効果があると報告した。
すなわち2年間,2週間ごとに専門家による口腔清掃を受けた実験群では、骨欠損部に骨の再生がみられた。
年1回の予防処置のみを受けた対象群の患者では、理想的な口腔衛生状態を保つことができず、歯周病の進行を示す結果となったとしている。

*Romfjord:20年以上もの長期間に渡り歯周治療に関するさまざまなアプローチを比較する臨床的な試みを行った。
歯周治療を受け予防のために3ヶ月間隔のリコールを受けた患者にとって、メンテナンス時におけるセルフケアによるプラークコントロールがいかなる役割を有するかについて,1982年に報告した。

これによると「患者が3ヶ月間隔で専門家による歯面清掃を受けていれば、術後のポケットの深さや付着の位置の維持にとって、セルフケアによる口腔衛生はたいして問題にならないことがわかった。」

そして3ヶ月おきのメンテナンスが続けられる限り、歯周炎が再発したとしても歯周ポケットの深さや歯肉の付着の位置には重大な影響を及ぼすようなことはなかったことも報告している。

*Nyman:6ヶ月に一度のスケーリングでは歯周疾患が再発し、悪化したことを報告。

*Rosling, Lindhe&Nyman:歯周病治療後、患者さん自身による素晴らしいプラークコントロールと、2週間に一度のPTC(Professional Tooth Cleaning)を行うことによって歯周疾患の進行が止まり、健康な歯周組織が完全に維持されたことを報告。

歯周病の検査・診断・治療計画の指針

実際には、歯周病の増悪因子となるような全身疾患の罹患がなく、健康状態が良好で且つお口の中の衛生状態が良い患者さんであれば、リコールの間隔はもう少し長くすることが可能となるなるでしょう。
重度の歯周病の後やセルフケアがうまく行かない場合、また全身疾患など様々な要因により抵抗力が弱くなっている時、再発あるいは発症のリスクの高い患者さんでは、リコールの間隔は短くした方が良い場合があります。

なぜ歯医者の定期検診(メンテナンス)は3ヶ月に1回なのか!?のまとめ

定期検診(メンテナンス)は治療後の経過観察や早期発見の機会となるだけでなく新たな歯周疾患を引き起こさないための予防的歯科処置であり,あらゆる人に必要なものであるということがおわかり頂けたでしょうか。
歯の喪失の一番の原因は歯周病です。
歯周病を予防することで歯を失うことなく、一生自分の歯で食事をしていくことができるのです。

近年では高齢者において残存歯数が少ないことが認知症の重症化のリスクを高くするという相関性についての報告もされています。

定期的なメンテナンスで歯周病を予防し続けることは、生涯にわたり健やかな日々を送るための、未来への先行投資ともなりえるのです。
気軽に相談ができて、長いおつきあいをしていけるようなかかりつけ歯科医を見つけ、多くの人が定期的にメンテナンスを続けていただければと考えています。