予防歯科

歯のクリーニングに効果的なPMTCを歯科医が解説!

歯医者さんに行った時、定期的に歯のクリーニングを勧められるかと思います。しかし、別に虫歯になっているわけでもないのに、どうしてクリーニングをしなければいけないのだろうかと疑問に思うのではないでしょうか。でも、このクリーニングはとても大切で定期的にクリーニングをした人としていない人では、虫歯になる確率が倍以上違ってくるといったデータもあります。ですので、まずはクリーニングのメリットや方法について把握していくところから始めてみましょう。

1. 歯のクリーニングの目的って何?

歯のクリーニングの目的は、私生活で歯にこびりついてしまった歯垢を除去することです。歯垢は細菌が固まりになったもので、これを放っておくと虫歯や歯周病の原因となってしまいます。歯垢の量が少なければ歯磨きで取り除くことも出来ますが、歯垢の量が増えてしまうと、細菌の増殖が急スピードで進むようになり、お口の中の歯垢がどんどん強くなっていき、普通の歯磨きでは取り除くことが出来ません。つまり、自分ではどうしようもない状態になってしまうのです。こうなってしまうと、歯の専門医である歯医者さんに通ってPMTCと呼ばれる歯垢除去をしてもらう必要があります。

2. PMTCって何?

PMTCとは…

  • P=プロフェッショナル
  • M=メカニカル
  • T=トゥース
  • C=クリーニング

と呼ばれるものです。
難しそうな横文字が並びましたけど、簡単にいうと歯医者さんでしてもらう歯垢除去のことです。歯医者では、PMTC専用の器具が準備されており、これを使うことでお口の中に溜まった歯垢・歯石を綺麗に取ることが出来ます。

2-1 PMTCは歯周ポケットの歯石も除去できる!

歯垢は歯の見えている部分だけに発生するものではなく、一度歯の表面に発生してしまうと、そこから歯全体を覆うように繁殖してしまう厄介な細菌です。最終的には、歯周ポケットと呼ばれる歯茎の中にまで繁殖していきます。歯周ポケットに歯垢が発生してしまうと、どれだけ頑張っても歯磨きでクリーニングすることは出来ません。しかし、PMTCであれば話は別です。専門の技術を持った歯科衛生士さんが、器具を使って歯周ポケットの奥深くの歯垢まで綺麗に除去してくれます。

2-2 PMTCなら歯石も除去できる!

歯垢は実に厄介な細菌で発生から48時間が経つと「歯石」に変化します。文字から想像できる通り、歯石は歯垢が固まったものとなり、こうなってくると歯にこびりつくというより、歯と同化している状態となる為、歯ブラシで磨いても落とすことが出来ません。
でも、PMTCでは歯に振動を与えて固くなった物質を削るように落としていくことが出来ます。インターネット上では「自分で歯石を落とす方法」といったサイトもあるようですが、歯石も歯垢もPMTCでなければ完璧に落とすことが出来ませんので、誤った情報を鵜呑みにしないように気を付けて下さい。

2-3 バイオフィルムを清潔な状態に保てる!

少し専門的な話になりますが、私たちの歯の表面には「バイオフィルム」と呼ばれるものが存在しています。このバイオフィルムは歯を守る役割があります。分かりやすく言うと、スマートフォンの画面カバーのようなものです。しかし、歯垢が発生してしまうと、歯垢がバイオフィルムに侵食し始めてしまい、バイオフィルム自体が細菌だらけになってしまいます。この状態になると、虫歯のリスクが一気に跳ね上がるだけでなく、歯周病の発症率も大幅に上昇してしまいます。

でも、安心して下さい。PMTCでは細菌感染したバイオフィルムを剥がすことが出来ます。バイオフィルムは自然に再生するものですので、PMTCで細菌だかけのバイオフィルムを取れば、新しいバイオフィルムに生まれ変わります。

3. 歯のクリーニング「PMTC」の流れについて

ここまで読んで頂ければ、お口のクリーニングであるPMTCのメリットや重要性については理解頂けたと思います。でも、実際にどのような手順で行っていくのかは分かりませんよね。元々、歯医者さんには「痛い」というイメージがあるでしょうから、少しでも分からないことがあると、足を運ぶのも抵抗を覚えてしまうと思います。ですので、あなたの不安がなくなるように、クリーニングの流れについて説明していきます。

STEP1 専用薬剤で歯垢の確認
最初は、どれくらいの歯垢が歯にこびりついているのかを確認します。これは、専用の薬剤を歯に塗ることで分かるのですが、この過程を踏むことで歯垢が集中している場所が分かるため、あなたの歯ブラシのクセも見つかります。歯垢を見つけるだけでなく、歯ブラシのクセをなくして、歯垢の溜まらないブラッシング指導のポイントにもなっているというわけです。

STEP2 歯磨きの仕方を丁寧に指導
あなたの歯ブラシのクセが分かったところで、歯科衛生士が、どのように歯を磨けばいいのかを丁寧に指導してくれます。実は、ここがとても大事な部分です。PMTCは歯石や歯垢をクリーニングしてくれる方法なのですが、一番大事なのは「歯垢を溜めない」ということです。その為に出来ることは毎日の歯磨きの質をあげていくこと。「今さら歯磨きの仕方なんて学んでも…」と思われるかもしれませんが、歯磨き技術の向上は虫歯、歯周病発生を抑える重要なポイントですので、正しい歯磨きを覚えていきましょう。

STEP3 いざクリーニング開始!
歯磨き指導まで終わったら、ようやくPMTCの開始です。歯科衛生士が専用の器具を使って、歯にこびりついた歯垢や歯石を綺麗に取り除いていきます。この時、歯周ポケットの中を触る時に、少しチクっとしますが、我慢して下さいね。また、歯医者のクリーニングでは、PMTCの器具だけでなく、特殊なチップや研磨剤を使って歯の間の歯垢も落としていきます。

4. クリーニング費用っていくらなの?高いって聞くけど…

頑固な歯垢や歯石を取り除いてくれるPMTCですが、いざやろうと思った場合、頭に浮かぶのが「費用」ではないでしょうか。保険がきくのであればまだしも、自由診療になってしまうと高くて出来なかったりしますよね。その部分を詳しくお話していきます。

4-1 PMTCが保険診療に適用する場合

歯医者で行うPMTCですが、保険診療として認められる場合があります。それは、歯垢が歯周病に悪影響を及ぼすと判断された場合です。歯医者さんがクリーニングを勧めてくるということは、放置しておけない段階にきているというケースが多いでしょうから、基本的には保険診療となります。ただ、PMTCを保険診療で行うには「期間」が制限されており、3ヶ月に1回しか出来ません。その為、歯垢の量が多く、毎月クリーニングしなければならない状態まで悪化してしまうと翌月以降は保険が適用されません。尚、保険診療でPMTCを行った場合にかかる費用は3000円前後となっています。

4-2 自由診療でPMTCを行った時の費用

前項でお話した通り、クリーニングを保険診療で行えるのは3ヶ月に1回、それも、歯科医が「健康に害を与える」と判断した時のみですので、これ以外のパターンでは自由診療となります。さて、この時の費用ですが一体いくらなのでしょうか。歯医者によって金額差はありますが、大体1~2万円となっています。

5. 歯のクリーニングをした方が良い人とは?

お口の中に、異常がなければクリーニングをする必要はありません。とは言え、日本人の多くは歯周病のリスクを抱えているので、実際は「クリーニングしなくて良い人」というのは存在しないと思います。では、どのような状態になったらクリーニングに行った方が良いのでしょうか。

爪で歯をなぞった時、白いものが取れる方
爪で、歯をなぞった時、爪の間に白い物質が付着したなら要注意。この物質こそが歯垢です。今すぐ歯医者さんで歯垢を取ってもらいましょう。

矯正器具を付けている方
矯正器具を付けていると、歯ブラシが行き届かない箇所が出てくるので歯垢が溜まりやすくなります。矯正中の歯垢増殖は口臭の原因にもなるので、定期的にクリーニングするようにしましょう。

口臭が気になる方
歯垢や歯石は口臭の原因にもなっています。歯磨きをしているのに、口臭が酷い場合はPMTCを行うことで改善することもあるので、歯医者さんに相談すると良いでしょう。

ABOUT ME
田中 健久
医療法人社団歯科タナカ 理事長・歯科医師 ネガティブな歯科医院のイメージを”おもてなしの心”で明るく、 元気に変えていく!